禁じられし扉 第18話
「シャトゥーム国王陛下。この写真が何かおわかりになりますよね?」
ノスチーヌ候は写真を国王に渡して言った。
「これは!?」
国王はその写真を見て驚愕した。
「ある者から手に入れたものでしてね。こんな事が王妃様、王女様方に知られてしまったら・・・。それに、あなたはとても誠実な方としてこの国中の人々から愛されている。そんな人物が・・・。」
ノスチーヌ候は写真を見て青ざめている国王にさらに追い討ちをかけるように言った。
「このような事をしているとわかれば、あなたは国民からの信頼を失うだけでは済まないのではないのですか?」
「・・・私にどうしろと?」
国王は俯いたままで言った。その肩は小刻みに震えていた。
「簡単なことです。ただユーリ様をヴァラベル王妃にと。悪いお話ではないと思いますよ・・・一国家の王妃なのですから。王女にとって王妃になるという事はとても幸せなことではありませんか!!」
ノスチーヌ候は不敵な笑みをこぼしながら国王に言った。
「・・・・・。」
そんな様子を黙って見ていた国王は静かに口を開いた。
「・・・本当の目的は何だ?」
「・・・どういう意味でしょうか?」
ノスチーヌ候から笑顔が消え、鋭い視線が国王に向けられた。
「何か目的があるのだろう?そのような写真を使ってまでユーリをヴァラベル王妃にしようとするぐらいなのだから・・・ヴァラベル国は財政難になりつつあるようだしな・・・。」
国王もまた殺気を感じるぐらいの覇気をノスチーヌ候に発し言った。するとノスチーヌ候はしばらく国王を見ていたが立ち上がり言った。
「・・・私の首をお刎ねになりますか?しかしそんな事をしても・・・」
「そんな事はしない。お前の首を刎ねたところでこの問題が解決するわけではないからな・・・。」
国王はノスチーヌ候の言葉を遮り、立ち上がったと同時に目にも留まらない速さで剣を抜きノスチーヌ候の首元に突きつけた。
「目的を聞こう。そして出来る事なら王妃や王女、国民を巻き込まずに問題を解決したい。」
「・・・。」
ノスチーヌ候は国王のすさまじい覇気を感じ全身が震えそうになった。そして首に食い込みかけている剣にすこし戸惑っていた。
シャトゥーム国王ザビエルはとても慈悲深く穏やかであり、武術は全く会得していない人物だと聞いていたからだ。
「さすが一国の国主であらせられる。武術の腕前がこれほどまでとは・・・」
「武力は嫌いだ。一番尊い命を簡単に奪うからな・・・。しかし、私は国の父だ。守る時は守らねばならない。私は守るためだけに武術を使う。」
国王はさらに剣をノスチーヌ候の首に食い込ませた。
「あなたはとてもよい国王であらせられる。我が国王も少しは見習っていただきたいものです。」
ノスチーヌ候は全身の力を抜いて言った。
「あなた様のおっしゃる通りでございます。わが国は財政難に陥りかけています。現在は官たちの必死の働きによってなんとか体裁を保っておりますが・・・それもどこまで持つかどうかわかりません。」
国王はノスチーヌ候の首に食い込ませていた剣を首から離し、鞘に納めてイスに座った。
「経済援助・・・それが目的か・・・。しかし、王室が財政難に陥っている理由はレイン王太子に入れ込みすぎているからなのではないのか?その王太子と母親である王妃の位を剥奪すれば二人は王室から出て行くわけだし、むしろ王室の財政難は回復するのではないのか?それとも何か他に理由があるのか?」
「・・・鋭くていらっしゃる。王太子と王妃の位剥奪の本当の理由は申しあげられませんが、浪費家であった二人を王室から追放する理由には十分でありましたし・・・ロッソ国王は王妃にも王太子にも興味を御持ちではありません。ですから位剥奪に関しましてもすぐに了承されました。しかし・・・二人が今までにこしらえた借金は途方もなく多く、王室を立て直そうにも・・・。」
ノスチーヌ候は肩を落とし、額に手を当てて頭を横に振った。
「王室を立て直すための金が必要なのか・・・。」
国王がノスチーヌ候に聞くと、ノスチーヌ候は頷いた。
「左様でございます。国民より税金を今以上多くとるわけにはいきません。国民の生活も少しずつではありますが王室の財政難の影響を受けつつありますので・・・。ですからもうシャトゥーム国しか・・・。」
「何故初めからその理由を言わなかった?」
国王は顔をしかめてノスチーヌ候を見た。
「ユーリ様をヴァラベル国王妃にというお話も本気でございます。ヴァラベル国には王妃がいませんので・・・そして跡継ぎも。」
「・・・それはヴァラベル国王も望んでおられるのか?」
「もちろんでございます。シャトゥーム国第一王女であり、エレーナ・アリアット王后陛下を母に持つユーリ様を是非にと・・・。」
ノスチーヌ候はそう言うとイスに座った。
「・・・セーナもいるのにか?」
「セーナ様はテクノロジー関係にとても精通されておられます故、王妃になられては少しヴァラベル国とてして不都合な事になるのです。その点ユーリ様はあまりテクノロジー関係には関心をお持ちではないので・・・。」
ノスティーヌ候の説明を聞いていた国王は頭を抱えながら不思議そうな顔をして聞いた。
「・・・では、何故セーナをヴァラベル国に留学を?」
「そ、それは・・・」
国王の問いにノスチーヌ候は言葉に詰まった。
「何故なのだと聞いているのだ!!」
「ユーリ様はしばらく体調を崩しておられたという情報がありまして・・・セーナ様が留学でユーリ様のお傍を離れれば・・・その・・・」
国王が声を荒げるとノスチーヌ候は詰まりながら答えた。
「・・・セーナが国を離れ、そしてユーリの体調が崩れている時を狙ったというわけか・・・それはヴァラベル国王の指示なのか?」
「はい・・・といいますか・・・我々が会議で決め、それを国王に報告したという形になるのですが・・・。」
国王は全てを聞かなくともノスチーヌ候が何を言おうとしているのかわかった。
「そうか・・・。」
ヴァラベル国王とは直接面識があったわけではないが、ザビエル王がまだ王子で王妃と出会ったばかりの頃、エレーナ王女に当時王太子だったヴァラベル国王が熱心に求婚していたのだ。もちろんエレーナ王女は断り続け、そしてエレーナ王女の父親であるディナスティー国王もヴァラベル国からの再三の要求に一切答えなかった。その事は王子だったザビエル王も知っていた。その後、エレーナ王女はザビエル王子と結婚し、ロッソ王太子はヴァラベル国一の名門であるラ・ジューム公爵家のティナー・マグレット嬢を妃に迎えた。
「ノスチーヌ候・・・私とてすぐに結論を出すことなどできない。しばらく考えさせていただきたい。」
国王は視線を落としたままノスチーヌ候に言った。するとノスチーヌ候はイスから立ち上がり、そして膝をついて頭を下げて言った。
「もちろんでございます。お返事を伺いに再び参らせていただきます。ごゆっくりお考えになってください。」
「あぁ・・・。」
ノスチーヌ候は深く頭を下げ、静かに部屋を出た。
ノスチーヌ候は写真を国王に渡して言った。
「これは!?」
国王はその写真を見て驚愕した。
「ある者から手に入れたものでしてね。こんな事が王妃様、王女様方に知られてしまったら・・・。それに、あなたはとても誠実な方としてこの国中の人々から愛されている。そんな人物が・・・。」
ノスチーヌ候は写真を見て青ざめている国王にさらに追い討ちをかけるように言った。
「このような事をしているとわかれば、あなたは国民からの信頼を失うだけでは済まないのではないのですか?」
「・・・私にどうしろと?」
国王は俯いたままで言った。その肩は小刻みに震えていた。
「簡単なことです。ただユーリ様をヴァラベル王妃にと。悪いお話ではないと思いますよ・・・一国家の王妃なのですから。王女にとって王妃になるという事はとても幸せなことではありませんか!!」
ノスチーヌ候は不敵な笑みをこぼしながら国王に言った。
「・・・・・。」
そんな様子を黙って見ていた国王は静かに口を開いた。
「・・・本当の目的は何だ?」
「・・・どういう意味でしょうか?」
ノスチーヌ候から笑顔が消え、鋭い視線が国王に向けられた。
「何か目的があるのだろう?そのような写真を使ってまでユーリをヴァラベル王妃にしようとするぐらいなのだから・・・ヴァラベル国は財政難になりつつあるようだしな・・・。」
国王もまた殺気を感じるぐらいの覇気をノスチーヌ候に発し言った。するとノスチーヌ候はしばらく国王を見ていたが立ち上がり言った。
「・・・私の首をお刎ねになりますか?しかしそんな事をしても・・・」
「そんな事はしない。お前の首を刎ねたところでこの問題が解決するわけではないからな・・・。」
国王はノスチーヌ候の言葉を遮り、立ち上がったと同時に目にも留まらない速さで剣を抜きノスチーヌ候の首元に突きつけた。
「目的を聞こう。そして出来る事なら王妃や王女、国民を巻き込まずに問題を解決したい。」
「・・・。」
ノスチーヌ候は国王のすさまじい覇気を感じ全身が震えそうになった。そして首に食い込みかけている剣にすこし戸惑っていた。
シャトゥーム国王ザビエルはとても慈悲深く穏やかであり、武術は全く会得していない人物だと聞いていたからだ。
「さすが一国の国主であらせられる。武術の腕前がこれほどまでとは・・・」
「武力は嫌いだ。一番尊い命を簡単に奪うからな・・・。しかし、私は国の父だ。守る時は守らねばならない。私は守るためだけに武術を使う。」
国王はさらに剣をノスチーヌ候の首に食い込ませた。
「あなたはとてもよい国王であらせられる。我が国王も少しは見習っていただきたいものです。」
ノスチーヌ候は全身の力を抜いて言った。
「あなた様のおっしゃる通りでございます。わが国は財政難に陥りかけています。現在は官たちの必死の働きによってなんとか体裁を保っておりますが・・・それもどこまで持つかどうかわかりません。」
国王はノスチーヌ候の首に食い込ませていた剣を首から離し、鞘に納めてイスに座った。
「経済援助・・・それが目的か・・・。しかし、王室が財政難に陥っている理由はレイン王太子に入れ込みすぎているからなのではないのか?その王太子と母親である王妃の位を剥奪すれば二人は王室から出て行くわけだし、むしろ王室の財政難は回復するのではないのか?それとも何か他に理由があるのか?」
「・・・鋭くていらっしゃる。王太子と王妃の位剥奪の本当の理由は申しあげられませんが、浪費家であった二人を王室から追放する理由には十分でありましたし・・・ロッソ国王は王妃にも王太子にも興味を御持ちではありません。ですから位剥奪に関しましてもすぐに了承されました。しかし・・・二人が今までにこしらえた借金は途方もなく多く、王室を立て直そうにも・・・。」
ノスチーヌ候は肩を落とし、額に手を当てて頭を横に振った。
「王室を立て直すための金が必要なのか・・・。」
国王がノスチーヌ候に聞くと、ノスチーヌ候は頷いた。
「左様でございます。国民より税金を今以上多くとるわけにはいきません。国民の生活も少しずつではありますが王室の財政難の影響を受けつつありますので・・・。ですからもうシャトゥーム国しか・・・。」
「何故初めからその理由を言わなかった?」
国王は顔をしかめてノスチーヌ候を見た。
「ユーリ様をヴァラベル国王妃にというお話も本気でございます。ヴァラベル国には王妃がいませんので・・・そして跡継ぎも。」
「・・・それはヴァラベル国王も望んでおられるのか?」
「もちろんでございます。シャトゥーム国第一王女であり、エレーナ・アリアット王后陛下を母に持つユーリ様を是非にと・・・。」
ノスチーヌ候はそう言うとイスに座った。
「・・・セーナもいるのにか?」
「セーナ様はテクノロジー関係にとても精通されておられます故、王妃になられては少しヴァラベル国とてして不都合な事になるのです。その点ユーリ様はあまりテクノロジー関係には関心をお持ちではないので・・・。」
ノスティーヌ候の説明を聞いていた国王は頭を抱えながら不思議そうな顔をして聞いた。
「・・・では、何故セーナをヴァラベル国に留学を?」
「そ、それは・・・」
国王の問いにノスチーヌ候は言葉に詰まった。
「何故なのだと聞いているのだ!!」
「ユーリ様はしばらく体調を崩しておられたという情報がありまして・・・セーナ様が留学でユーリ様のお傍を離れれば・・・その・・・」
国王が声を荒げるとノスチーヌ候は詰まりながら答えた。
「・・・セーナが国を離れ、そしてユーリの体調が崩れている時を狙ったというわけか・・・それはヴァラベル国王の指示なのか?」
「はい・・・といいますか・・・我々が会議で決め、それを国王に報告したという形になるのですが・・・。」
国王は全てを聞かなくともノスチーヌ候が何を言おうとしているのかわかった。
「そうか・・・。」
ヴァラベル国王とは直接面識があったわけではないが、ザビエル王がまだ王子で王妃と出会ったばかりの頃、エレーナ王女に当時王太子だったヴァラベル国王が熱心に求婚していたのだ。もちろんエレーナ王女は断り続け、そしてエレーナ王女の父親であるディナスティー国王もヴァラベル国からの再三の要求に一切答えなかった。その事は王子だったザビエル王も知っていた。その後、エレーナ王女はザビエル王子と結婚し、ロッソ王太子はヴァラベル国一の名門であるラ・ジューム公爵家のティナー・マグレット嬢を妃に迎えた。
「ノスチーヌ候・・・私とてすぐに結論を出すことなどできない。しばらく考えさせていただきたい。」
国王は視線を落としたままノスチーヌ候に言った。するとノスチーヌ候はイスから立ち上がり、そして膝をついて頭を下げて言った。
「もちろんでございます。お返事を伺いに再び参らせていただきます。ごゆっくりお考えになってください。」
「あぁ・・・。」
ノスチーヌ候は深く頭を下げ、静かに部屋を出た。
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- 2008年
- 01月
- 11日
- (金)
- 23:54
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