禁じられし扉 第16話

「ちょ、ちょっとユーリ・・・一体、どこに・・・」
セーナは入口から続く階段を降りながら言った。階段の幅は狭く、人が一人やっと通れるぐらいしかなかった。そして、階段の至るところから道が出ていてまるで迷路のようになっていた。
 「プラリスの塔の地下って・・・広いの?」
セーナはユーリを見失わないように必死で追いかけていた。
 「どうして?」
 「だって・・・道がたくさんあるから。」
セーナが周りをキョロキョロ見ながら言うと、ユーリは前を向いたまま答えた。
 「そうねぇ〜・・・確かに広いとは思うわよ。セーナってプラリスの塔には初めて入ったの?」
 「え・・・うん。だってプラリスの塔ってただの塔だと思っていたし、それに神聖な場所だから・・・」
セーナがそう言うとユーリはクスリと笑った。
 「普通はそうよね。この国でプラリスの塔の伝説を知らない人はいないもの。でも・・・真実を知る者はいないに等しいんじゃないかしら?」
 「真実?えっ・・・じゃあ、伝説は・・・」
ユーリは真剣な顔で語り始めた。
 「このプラリスの塔は確かに内乱が続いた時代に国王が城を守るために築いたもの。でも本当の目的は愛する者を守るために築かれたものなのよ。」
 「愛する者?」
 「うん。それがプラリス王妃だったのよ。内乱が続き、城内にも何度も民衆が攻めこんで来ていたみたいなの。城内はもはや安全ではなかったのよ・・・だから国王はプラリスの塔を築き、地下に部屋を作った。沢山の罠と共にね・・・。」
 「・・・沢山の罠って・・・もしかして・・・」
セーナがそう言って階段から出ている道を指差すとユーリは頷いた。
 「そうよ。地下の部屋に行く道は1本だけ。他の道は全部罠・・・その道に足を踏込めば最後・・・二度と外には出られないみたい。」
ユーリが冷静な口調で言うとセーナは不安そうにユーリに言った。
 「ちょっ・・・ユーリぃ〜・・・」
 「大丈夫よ!!道は知ってるから!!」
ユーリは笑顔で答え、伝説の真実を続けた。
 「国王は地下の部屋に長期間生活できるだけの物を用意し、プラリス王妃を部屋に隠した。そして内乱が治まるまで王妃をずっと部屋に隠し続けたのよ。」
 「そんな事が可能なの?だって・・・内乱が治まるまでってかなりの・・・」
セーナは驚いてユーリに聞いた。
 「うん。半年以上は確実でしょうね・・・。」
 「そんなに長く、ずっと一人で・・・」
ユーリが答えるとセーナは哀しそうに言った。
 「ずっと一人っていうわけではなかったのよ・・・」
 「えっ?どういうこと?だって・・・国王は王妃を地下の部屋に隠したって・・・」
 「うん。でも・・・食料などを補給する必要があるでしょ?いくら長期間生活できるって言っても食料はそうもいかないから・・・」
ユーリが苦笑してセーナを見るとセーナは頷いた。
 「だから、国王は王妃を隠したことがばれないように信頼できる王妃護衛官の一人であった、とある若者に食料など王妃が必要とするものを届けさせていたのよ・・・若ければ雑用係に見えるからね。」
 「・・・。」
 「だから王妃はずっと一人ではなかったのよ・・・そして内乱は治まった・・・」
ユーリがそこまで語り終えるとセーナは不思議そうにユーリに聞いた。
 「あれっ?それじゃ、王妃は生きてたってことになるん・・・」
 「重要なのはこれから!!」
ユーリがそう言うとセーナは口を閉じた。
 「内乱が治まって、城内も安全になり国王がプラリスの塔へ王妃を向かえに行ったとき・・・国王は信じられないもの見てしまったの。」
 「・・・。」
 「・・・王妃は国王を裏切ったのよ。」
ユーリはそう言うと鋭い視線をセーナに向けた。
 「裏切り・・・」
 「そう・・・王妃は護衛官の若者と関係をもっていたの。半年以上にも渡って若い男女が二人だけの時間を共有すれば、愛し合うっていうのも当然の流れって言えばそうなのかもしれないけど・・・。
  国王は王妃と護衛官との愛し合う現場を見てしまったのよ・・・」
 「・・・。」
セーナはコクンと唾を飲み込んだ。
 「王妃は国王の妻。王妃と関係を持つことは反逆罪。激怒した国王は護衛官をその場で殺し、王妃をそのまま地下の部屋に閉じ込めたのよ・・・。」
 「そんな・・・それじゃ、飢え死にしろって言っているのと同じことじゃない!!」
 「まぁね・・・でも、2・3日して頭を冷やして国王が王妃に会いに地下の部屋に行くと王妃は護衛官に寄り添って死んでいたの。どうやら、護衛官と愛し合った時から死を覚悟していたみたいで、毒を飲んだんですって。」
ユーリはそこまで語ると立ち止まって道を確認した。
 「そんな・・・じゃあ、どうしてあんな伝説が・・・」
セーナが下を向きながら言うとユーリは再び歩きだして言った。
 「王妃を隠していた・・・しかもその部屋で王妃が浮気をしていた・・・なんてこと言えないでしょう!?だから国王は王妃をプラリスの塔の上へ運び、そして家来たちを呼んだのよ・・・。まるで王妃がずっと塔の上で祈っていたかのように装ってね。だから伝説が生まれたのよ。」
ユーリが語り終えたとき、二人は石で作られた扉の前に来ていた。扉はそれほど大きくなく1.7mほどの高さしかなく、見た目は倉庫にしか見えなかった。
 「ここよ。」
ユーリはそう言うと扉の右側にある燭台を手前に引いた。すると壁の一枚のブロックがスライドし中には地下の入口にあったものと同じ鍵穴と電子画面が出てきた。ユーリは黙ったまま鍵を差し、パスワードを入力し鍵を回した。
すると、錠が外れる音がして石の扉が開いた。
セーナが驚いて見ているとユーリは部屋に足を踏み入れながらセーナに言った。
 「入らないの?」
セーナは慌ててユーリに続いて部屋の中に入った。

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