禁じられし扉 第13話

ユーリはしばらく何かを考えていたが、急に本棚に並んでいる本を全て勢いよく床へ落とした。すると、奥にレバーが現れユーリはそれを手前に引いた。
本棚は二つに分かれ左右に移動し、その奥からまた本棚が現れた。ユーリはその本棚からファイルを取り出した。
 「ユ、ユーリ?何・・・この仕掛け・・・私、こんな仕掛け知らないんだけど・・・。」
セーナは本棚の仕掛けをマジマジと見ながら言うと、ユーリは興味なさそうにセーナに言った。
 「あ〜・・・重要機密ファイルを収納するためのものよ・・・。機密を守るのは国家元首の義務なんだし、これくらいの仕掛けは当然でしょ?」
 「・・・そうですか・・・。でも、よくこんなものを手に入れられたね・・・。」
セーナが仕掛けを調べながら言うとユーリは笑顔で答えた。
 「あらっ♪国防長官に貸しがあったじゃない!?国防長官推薦という・・・それで、頂いたのよ〜!!」
 「あ〜・・・そう言えば、現国防長官のクォーディル候はユーリがお父様に推薦したんだっけ・・・。」
セーナが呆れた顔で言うとユーリはファイルを見ながら言った。
 「そうよぉん!!あ・・・あった、あった☆」
 「そのファイルは何!?」
 「重要機密ファイル♪これは・・・他国の様々な機密情報が書いてあるのよ☆ちなみにさっき言っていたヴァラベル王室の財政難の情報もここからよ♪」
セーナが不思議そうにファイルを見ながらユーリに聞くと、ユーリは笑顔で言った。そしてファイルをセーナに見せながらヴァラベル王室の機密情報を読みだした。
 「レイン・ロゼルタ王太子が設立した新たなテクノロジー開発機関は税金によって設立され、税金によって運営されているが研究成果は上がっておらず、またレイン・ロゼルタ王太子は所属しているだけで研究室には一度も足を運んだことがない。しかし、1年前からレイン・ロゼルタ王太子は頻繁に出入りするようになった。王太子が今、開発に携わっている研究はどうやら『半永久ヘアーコンタクト』のようである。
  新たなヴァラベル国の目玉とするためと思われたが、どうやら王太子自らの為だと思われる。なぜなら最近、王太子は頭髪が薄くなってきておりそれを隠すために必ず帽子をかぶっている。王太子もお年頃になられて少しは容姿を気にかけられているご様子。」
 「・・・王太子って18歳ですでにハゲなの!?」
セーナが気持ち悪そうな顔をしてユーリに聞くと、ユーリはファイルを読みながら言った。
 「さぁ〜・・・私も直接、王太子に会ったことがないからわからない。でも・・・」
ユーリは立ち上がり別のファイルを本棚から取り出した。
 「ん〜っと・・・全部帽子をかぶっているわねぇ〜。」
ユーリはセーナの前にファイルを差し出した。そこにはレイン王太子と思われる人物の写真が何枚もあった。
 「・・・えっ。コレ・・・?」
セーナはその写真を見ると信じられないという顔でユーリを見た。
 「うん・・・ブッサイクでしょ☆隣にいる女性がティナー王妃ね!!」
ユーリはそう言って王太子の横に写っている女性を指差した。
 「うわ〜・・・・・やっぱりお母様ってすっごい美人なのねぇ〜。」
セーナがティナー王妃を見ながら言うと、ユーリは隣で爆笑しだした。
 「あはは。やっだ〜、セーナったら!!ティナー王妃を見てそんなこと言ったらお母様に失礼じゃない。あはは・・・。」
ユーリのあまりの笑いぶりにセーナは訳がわからいといった顔でユーリを見た。
 「???」
 (ヴァラベル国王妃に対して失礼だったのか?それともお母様と交友があるのか?)
 「あはははは。はぁ〜・・・。もう!!セーナってば信じられない・・・。」
ユーリは一頻り笑うと手で顔を仰ぎながら言った。
 「お母様はこの世で最も美しいと言われている人なのよ!?そんな絶世の美女とヴァラベルの親バカ王妃とを比べるなんて・・・比較対象にするなんてお母様に失礼よ!!」
 「そういう事ね・・・」
 (私より言っていることがヒドイな・・・)
セーナは理解したと頷きながら言った。
 「大体、ヴァラベル国王妃って言ったら・・・全世界の王妃もしくは王太子妃の中でもかなりランクが下なんだから!!」
そう言ってユーリは別のファイルをセーナに見せた。
 「ん?・・・はっ!?何これ!!」
それを見てセーナは驚いた。
 「ちょっと、ユーリ!!何なのよ、コレ!?『全世界国家元首容姿ランク・女性版』って・・・こんなランキング・・・。何の意味があるのよ?」
 「何を言ってるのよ!!国家元首の娘・息子が結婚する際の情報になるのよ。国家元首の家族ともなると、こういう情報も大切になってくるからね〜・・・ほら!!お母様はランキングのトップ、第1位よ!!」
 「うわっ!!本当だ。やっぱりすごいなぁ〜。お父様はどうやってお母様の心を捉えたんだろう・・・あ、ティナー王妃は?」
セーナはティナー王妃がどこにいるのかを探し始めた。するとユーリはファイルを一度閉じた。
 「ちょ、ちょっと・・・」
そしてファイルの最後のページをセーナに見せた。
 「ユーリ?」
 「かなり下だから、最後から探した方が早いよ!!」
セーナが困惑しているのをよそにユーリは最後のページから探し始めた。
 「え〜っと・・・ティナー・マグレットは・・・あっ・・・」
ユーリが固まっていると、セーナが横から顔を出してファイルを見た。
 「あった!?・・・ん?あっ!!ティナー王妃ってコレ?」
セーナもティナー王妃の名前を見つけると順位を見て固まってしまった。
 「ティナー王妃って・・・15000番中14986番なんだね・・・」
しばらくしてセーナが小さな声でつぶやくとユーリは無言で頷いた。
 「まさか・・・こんなにもランクが下とは思ってなかったわ・・・」
(さっき、あんなに貶していたのに・・・よく言うな・・・)
 「・・・セーナ、何か?」
セーナの心を読んだかのようにユーリは笑顔でセーナに言った。
 「え゛っ!!・・・いやいや・・・ティナー王妃のランクがあまりにも下だったから驚いたのよ・・・ははは・・・。」
セーナが慌てて言うとユーリはセーナの顔をしばらく見つめ、視線をはずしファイルを閉じた。
 「そう・・・それならいいんだけど。」
 「・・・う、うん。」
 「お母様に失礼ってことがわかったでしょ?」
ユーリがセーナの方を見て言うと、セーナは先程のティナー王妃が映った写真を見ながら何か考え事をしていた。
 「どうしたの、セーナ?」
ユーリが写真をのぞき込みながら聞くと、セーナは視線を離さずにユーリに言った。
 「ねぇ、このティナー王妃って・・・誰かに似てない?」
 「えっ?」
ユーリが不思議そうな顔をしてセーナを見るとセーナは写真から視線を離してユーリの方を向いた。
 「誰かに似ている気がするのよ・・・この顔・・・私、見たことがあるような気がするの。」
セーナの真剣な眼差しにユーリは少し戸惑った。セーナはティナー王妃の顔を見たのは今日が初めてでありヴァラベル国へ行ったこともないため、見覚えがあるはずがないのだ。
 「・・・ティナー王妃を知っている気がするの?」
ユーリは恐る恐るセーナに聞いた。するとセーナは首を横に振った。
 「ううん。ティナー王妃のことは全然知らないし、今日初めて見た。でも、誰かに似ているの・・・。誰に似ているのか思い出せないのよ・・・。」
 「・・・私も知っている人・・・?」
ユーリが心配そうに聞くと、セーナは首を傾げて言った。
 「ごめん・・・それさえも思い出せない・・・。う〜・・・頭の中に靄がかかってるのよ!!!」
セーナは両手で頭を抱えて天を仰いだ。その様子を見ながらユーリはティナー王妃の写真が映っているファイルを取って言った。
 「セーナ・・・気持ちはわかるけど・・・今はそんなコトで騒いでいる場合じゃないと思うんだけど・・・。」
ユーリの冷静な視線にセーナは我にかえったかのように勢いよくユーリを見た。
 「そうよ!!こんなコト言ってる場合じゃないって!!どうしよう・・・ユーリ、どうしたらいい?ヴァラベルのバカ王太子と婚約なんて絶対に嫌!!!」
 「・・・。」
 「ユ、ユーリ!?聞いてるの!?ちょっと!!!ユーリ!!!」
セーナは下を向いて考え事をしているユーリの肩を勢いよく揺らした。
 「ちょ、ちょっと・・・やめてっ・・セーナ!!聞いてるってば!!!」
セーナに激しく揺すられながらユーリはセーナの腕を持って言った。
 「もうっ!!落ち着いてよ、セーナ。」
ユーリはセーナの手を振りほどいて、髪を整えながら言った。
 「だって・・・」
セーナは心配そうな顔をしてユーリに言った。
するとユーリはファイルを全て本棚に直し、レバーを引き、仕掛け本棚を戻した。
そして落ちていた本を拾いながら話し始めた。
 「セーナ・・・確かに婚約という可能性はあると思うの。でも、確定ではないのよ・・・ただ、そういう可能性があるっていうだけ・・・」
ユーリのいつもよりトーンの低い声にセーナは少し安心した。ユーリがトーンの低い声を出すときは何かしら考えがあるときだからだ。
 「だから・・・まずは確認という作業を行う必要があるのよ。本当にヴァラベル国王はセーナを王太子妃にするつもりなのかということをね・・・。確認が取れないことには断ることもできないでしょ?」
ユーリは拾った本を綺麗に本棚に並べてセーナの方を振り返った。
 「それはそうだけど・・・確認なんて取れるの?」
セーナも本を拾い上げて本棚に並べた。
 「・・・それなら大丈夫。」
 「???」
本を全部本棚に並べてユーリは言った。
 「一緒に来て!!」
ユーリはそう言って部屋を出た。セーナも慌ててユーリと一緒に部屋を出た。

禁じられし扉 第12話

 「なるほど〜。そんな事を言われたんだ・・・。」
ユーリはソファーに寝転んで言った。
セーナは部屋に帰ってユーリに全てを話した。
 「全く、人のことをバカにして!!それに、これは我がシャトゥーム国を侮辱している事も同じ!!ヴァラベル国の力を借りる必要なんかない!!」
セーナはクッションを思いっきり床に叩きつけた。そしてユーリを見て言った。
 「ユーリは腹が立たないの!?」
 「・・・。」
 「ユーリ!?聞いてるの!?」
セーナはソファーを覗き込んで言った。
 「・・・留学は口実なんじゃない?」
 「はっ?」
ユーリは起き上がり、セーナの顔を見て言った。
 「ヴァラベル国って、確か王太子が一人だけなのよ。」
 「それが何か?王太子であろうが王女であろうが別に私には関係が無いでしょ?」
セーナは顔をしかめて言った。
 「ちょっと待って・・・。」
ユーリはそう言うと本棚から分厚いファイルを取り出して、テーブルに置いてめくり始めた。
 「それは何?」
セーナが覘きこむと、ユーリは忙しそうにファイルをめくりながら言った。
 「あ〜・・・外交ファイルよ!!諸外国の情報をあつめてファイルしてあるのよ・・・もちろん王室関連の情報もね!!・・・あった!!」
ユーリはヴァラベル王室の情報を読み始めた。
 「先月、ヴァラベル第36代国王『ロッソ・ミディオル・フォン・ヴァラベル』はティナー・マグレット王妃との間に待望の第一子、レイン・ロゼルタ・フォン・ヴァラベル王太子を儲けた。ティナー・マグレット王妃は非常に体が弱く、国民は世継ぎを諦めていたが・・・・・」
 「レイン・ロゼルタ?どこかで聞いた様な・・・」
セーナがつぶやくとユーリはページをめくって言った。
 「聞いているはずよ・・・だって・・・えっと・・・」
そういってユーリは違うページを読み始めた。
 「『レイン・ロゼルタ王太子はヴァラベル国内に新たなテクノロジー開発機関を設立し、王太子自身も所属し開発に携わっている。』・・・えっと、あ、コレコレ!!『レイン・ロゼルタ王太子はシャトゥーム王国のセーナ・クリステル王女の開発した瞬即冷凍技術に非常に関心を持っており、また、開発したセーナ・クリステル王女のことを唯一、私の事が理解できる女性だと言っている。レイン・ロゼルタ王太子は母親のティナー・マグレット王妃と常に一緒に行動しておりマザーコンプレックスではないかと言われているのだが、その彼が初めて興味をもった女性はなんと、シャトゥーム国王女とは・・・』って書いてある。」
ユーリがファイルから顔を上げると、セーナは俯きそして肩は震えていた。
 「セ、セーナ?」
ユーリが声をかけるとセーナは両手に拳を作り、それを震わしながら声を絞り出した。
 「・・・あ・・・の・・・気持ちの・・・悪い・・・マザコン男〜・・・」
ユーリがファイルをテーブルから持ち上げた次の瞬間、テーブルは真っ二つに割れた。
 「あら〜・・・350年もののアンティーク家具なのに〜。」
ユーリは真っ二つに割れたテーブルを見ながら言った。
レイン・ロゼルタ王太子のその発言によってヴァラベル王国のマスコミはセーナの情報を少しでも手に入れるために、ありとあらゆる手を使ってきたのだ。そのため、盗聴や盗撮なども行われ、ヴァラベル王国のマスコミは全てシャトゥーム国への立ち入りを禁止にし、城内警備も厳しくなり王室の者は一切の自由が利かなくなった。そのため、ユーリやセーナも自由に行動することができなくなりとても不自由な生活を強いられることになった。
さらに、レイン王太子から様々な贈り物や手紙が届き、それによってさらにマスコミの情報入手合戦がひどくなったのだ。当のレイン王太子はセーナと交友関係を築こうとしていただけだったのだが、マザコンで有名な王太子が女性に、さらに一国の王女に贈り物や手紙を出すという行為はセーナが『ヴァラベル国王太子妃候補』としてマスコミを賑わしていたのだ。
 「あの、マザコン男のせいで私がどれだけ不便な生活を強いられたか・・・ユーリだってそうでしょ!?」
セーナは激しい口調で言った。
 「あいつのせいで私は24時間ずっとSPの監視下におかれたんだから!!」
 「・・・レイン王太子は今年で18歳なのよ・・・。」
ユーリはファイルを見ながら静かに言った。
 「それがどうしたって言うのよ!?」
 「ヴァラベル国の王室の伝統を知ってる?」
セーナが真っ二つに割れたテーブルを部屋の隅に運びながら聞くと、ユーリはファイルから顔を上げて言った。
 「・・・私が知っているわけないでしょ!?ヴァラベル国のことは前にユーリから聞いた事しか知らないし・・・」
セーナが少し脹れながらユーリに言うと、ユーリは少し苦笑した顔で言った。
 「ヴァラベル国の王室では継承者は20歳までに結婚し、30歳までに第一子を儲けなければならないのよ。これは国の繁栄を願うために、国の象徴である王室が国民に対して誠意を示す方法なんですって・・・。でも、レイン王太子はあの・・・その・・・まぁ、マザコンなわけで・・・。今まで彼が興味を持った女性は・・・セーナただ一人なのよ。だから、留学は口実で本当のところは王太子とくっつける事だと思うのよ。」
 「ちょ、ちょっと待ってよ!!なんでそうなるのよ!!私は・・・」
 セーナが混乱しながら言うと、ユーリはソファーに座り落ち着いた声で言った。
 「シャトゥーム国王位第一継承者。でも、私も王位第一継承者よ。」
 「・・・ユ、ユーリ・・・?」
セーナが驚いてユーリの顔を見た。
 「・・・ヴァラベル国はそう考えているんでしょうね。セーナは確かにシャトゥーム国王位継承者だけど、私がいるって・・・。ユーリ・パレルがシャトゥーム国の王位継承者になり、セーナ・クリステルをヴァレベル国王太子妃に・・・と。」
 「ユーリ・・・?」
ユーリが涼しい顔をしてそのような事を言ったのが信じられないという顔でセーナはユーリを見た。すると、ユーリの顔が険しくなった。
 「・・・まったく、勝手もいいところね。セーナは我がシャトゥーム国王位第一継承者よ。しかも、よりにもよってなんでヴァラベルのヘタレ王太子の妃にならなくちゃいけないのよ!!」
 「ユーリ・・・」
セーナは少し安心して笑顔で言った。
 「何、笑ってるの!?それに、今のヴァラベル王室がどう言う状態か知ってるの!?」
ユーリはイライラしながらセーナに言った。
 「え・・・だから、知らないって・・・。」
 「ロッソ国王とティナー王妃は王太子を溺愛するあまり、国家予算を息子のやりたい事につぎ込みすぎて、破産寸前なのよ!!」
セーナがぽかんとした顔でユーリを見ているとユーリはセーナに顔を近づけて言った。
 「はっ?でも、あの国は経済も安定してるって・・・それにテクノロジー技術も・・・」
 「表向きはね・・・おそらく国民も王室がどんな状態なのか知らないと思うわ!!だから、レイン王太子の婚約をなんとしてでも成立させようと必死なのよ。国民に王室の財政難がバレないうちに・・・。」
セーナが理解できないという様子でユーリに言うと、ユーリはファイルをソファーに放り投げて立ち上がった。
 「・・・つまり、セーナとの婚約を成立させてしまえば、それを口実に我が国からお金を借りられるということ!!一国の王太子と王女との婚約は両国の友好条約を無条件で結ぶということに等しいのよ!!さらに嫁がせた後はこっちとしては娘の安全を考え、提示された要求に対しては無理な事でないかぎり呑むでしょうしね・・・。」
 「ええぇぇぇ〜!!!そんなの人質と同じじゃない!!!」
セーナが叫ぶとユーリは厳しい顔をしたままセーナに言った。
 「はっきり言っておくけど、ヴァラベル国に嫁ぐってことはそれと同じよ!!レイン王太子はマザコンで女性には興味を持てない人だし、母親のティナー王妃は異常に息子を溺愛しているし・・・それに、ロッソ国王は女好きみたいだしね。嫁げば確実に拷問の日々ね。」
 「・・・絶対に嫌ぁ〜!!!」
セーナは両手で頭を抱えながら叫んだ。すると、ユーリはにっこり笑顔で言った。
 「じゃあ、丁重にお断りしないとねぇ♪」
 「・・・どうやって?」
セーナは不安そうな顔でユーリを見た。

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