禁じられし扉 第10話

「セーナ様、セーナ様!!」
セーナの私室のドアが勢いよく開いて、エリザベス夫人が入ってきた。
 「・・・きゃあぁぁぁ〜!!!」
セーナの私室に入るなりエリザベス夫人は悲鳴をあげた。
セーナの私室はまるで台風が去った後のように水浸しで部屋の中には物が散乱していた。
 「あ、エリザベス夫人。」
エリザベス夫人の悲鳴を聞いてセーナは奥から顔をだした。
 「セ、セ、セーナ様!?これは一体どういうことですか!?」
エリザベス夫人は声を震わせながら言った。
 「あ〜・・・ちょっと新しく開発した機械が暴走して・・・」
セーナはガラスの球に目をやりながら言った。するとエリザベス夫人はわなわな震えながら叫んだ。
 「一体何をお考えになっているのですか!?立派なお部屋が・・・」
エリザベス夫人が私室に入ろうとしたその瞬間、まるで水晶の中に閉じ込められたかのように夫人は氷づけになった。
 「・・・ヒステリックねぇ〜・・・。」
 「ユーリ!?」
氷づけになった夫人の後ろからユーリが顔をだして呆れた顔をしてエリザベス夫人を見た。
 「この部屋、水分子でいっぱいだから簡単にできちゃった!!」
ユーリがイタズラっぽくセーナに言うと、セーナは驚いた顔をした。
 「いつの間にそこまで扱えるようになったの?」
 「セーナが手袋とブーツを改良してくれたんだから・・・ちゃんと使いこなさないとね!!」
そう言ってユーリは手のひらに氷の華を作ってセーナに見せた。
セーナはあの後、2週間で水分子操作装置を完成させ、その後1週間で改良しユーリの手袋とブーツに装置を組み込んだのだ。
セーナが新たに開発したユーリの手袋とブーツに組み込んだ水分子操作装置は、3m四方の範囲でなら自由に水分子を操作することができる。空気中には常に水蒸気があるため自由に水を発生させ、操ることができる。そのうえ、瞬即冷却装置によってそれを凍らすこともできるのだ。
 「でも、セーナ!!セーナの持っているそのガラス球・・・なんとかならないの!?」
ユーリはセーナの持っているガラス球を覗き込んだ。
 「規模が大きい分、扱うのも難しいのよ・・・。それに、形状記憶装置も組み込んだからね・・・。まだ馴染んでないのよ・・・。」
セーナは溜め息をついて言った。
セーナのガラス球の中にはユーリの手袋などに組み込まれている水分子操作装置の何倍もの規模を操作することのできる装置が組み込まれており、さらに、操作した水分子をある形状のまま維持することのできる装置まで組み込まれている。操作する規模が大きくなるため分子操作も難しくなり、セーナは何度も部屋を水浸しにしていた。
 「はぁ・・・とにかく、この部屋にある水を片付けるよ・・・。」
そう言ってセーナは窓を開け、ガラス球を操作して部屋にある水を全て水蒸気にして窓から出した。エリザベス夫人を凍らせていた氷も水蒸気になって消え、夫人は床に倒れた。
 「エリザベス夫人、エリザベス夫人!!」
ユーリが夫人の肩を揺すりながら名前を呼ぶと、エリザベス夫人は目を静かに開けた。
 「・・・ユーリ様?」
 「エリザベス夫人、大丈夫ですか?」
セーナはしゃがみ、目を開けた夫人の顔を覗き込んで言った。
 「・・・セーナ様?」
そう言うと夫人は勢いよく起き上がり部屋を見渡した。
 「え・・・私は一体・・・セーナ様のお部屋が水浸しで、それで・・・あら?」
 「大丈夫ですか?入ってきていきなり倒れられたのでビックリしました。お医者様をお呼びしましょうか?」
セーナがそう言うと、夫人は顔の前で両手を振った。
 「とんでもございません!!大丈夫です。申し訳ございません!!私ったらとんでもないご無礼を・・・」
 「いいえ。きっとお疲れになっているのですよ。今日はもう休んでください。」
ユーリは夫人の肩を持ち、立ち上がるのを支えながら言った。
 「・・・そうですね、そうさせていただきます。セーナ様、ユーリ様、失礼いたします。」
夫人はそう言うと慌てて部屋から出て行った。
 「ちょっと、かわいそうだったかな〜?」
それを見てユーリが笑いながら言うと、セーナは窓を閉めて言った。
 「凍らせておいてよく言うよ・・・。でも、あんまり使用しない方がいいかもね・・・人体に影響を与えるのは確かだと思うし。」
 「ん〜・・・出来るだけ使わないようにするよ!!」
ユーリの発言にセーナは溜め息をついた。
ユーリが曖昧な返事を返すときは必ず、その通りに実行されない事をセーナはよくわかっていた。
そしてセーナは再びガラス球を操作し始めた。
 「でも、一体エリザベス夫人はセーナに何の用事があったのかな?」
セーナの横でユーリは氷の華を大量に作りながら言った。
 「さぁ・・・大事な用だったらまた来るんじゃない?」
セーナはガラス球の周りに水を纏わせ、大きな水の球を作りながら言った。
すると、ドアがノックされて侍女の声がした。
 「セーナ様、国王陛下がお呼びでございます。」
セーナは水を全て水蒸気に変え部屋から出して返事を返した。
 「わかりました。すぐに行きます。」
セーナはガラス球をポケットにしまってからユーリに言った。
 「ちょっと行ってくる。」
 「いってらっしゃ〜い♪」
ユーリは両手を頭の上で勢いよく振りながら行った。そして、セーナは部屋を出た。

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