禁じられし扉 第6話

「ユーリ様!?ユーリ様!?」
ジョーが家庭教師を始めて2ヶ月・・・
ユーリはジョーが家庭教師を始めて2週間目から授業の時間になると姿をくらますようになった。その度にエリザベス夫人はユーリを探して城中を走り回っていた。しかし、ここ1ヶ月は城中を探してもユーリを見つけることはできなかった。そして、ユーリは授業が終わると姿を現すのだった。
エリザベス夫人は今日もまた姿をくらましたユーリを探して城中を走り回っていた。
その様子を見てジョーは困った顔をしてセーナを見て言った。
 「セーナ様。ユーリ様は私になにかご不満でもあるのでしょうか?私はなにかユーリ様に対して失礼なことをしたのでしょか?」
するとセーナは物理学の本を読みながら言った。
 「さぁ〜・・・直接ユーリにお聞きになられたらどうですか?」
すると、ジョーはさらに困った顔をして何か考え込んでいた。そして、しばらくして口を開いた。
 「この状態が続くようであれば、国王、王后両陛下にご報告しなければいけません。ユーリ様のお勉強が進んでおりませんし、セーナ様の進行にも差し支えが出てきておりますので・・。」
するとセーナはジョーの顔をじっと見て本を閉じて立ち上がった。
 「セーナ様!?どうなさいました?」
ジョーが慌てて立ち上がると、セーナはジョーの方を見ずに静かに言った。
 「お父様やお母様に言いたければ言えばいいわ。でも、ユーリの態度は絶対に変らない。何の解決にもならないわ。それだけは覚えておいてください・・・。今日は気分が悪いの。授業はもうおわりにしてください・・・。」
そう言ってセーナは部屋から出て私室に戻った。そして胸元についているブローチをとった。ブローチは花の形をしており、真ん中に大きなダイヤモンドがついていた。セーナがそのダイヤモンドの部分を押すとブローチからレーザーが出た。それを私室にある大きな鏡にむけると鏡の中心に穴が空き、それが円状に広がり入り口が現れた。セーナが入り口をくぐると入り口は閉じ、再び元の鏡へと戻った。
 「セーナ?」
セーナが中に入るとユーリの声がした。鏡の入り口を入るとそこにはもう一つの部屋があった。その部屋には豪華なソファーに高級な食器、そして、奥の部屋にはセーナが開発した様々な発明品があり、隣には室内プールが完備されていた。
 「やっぱり鏡の間にいたんだ・・・。エリザベス夫人が必死で探してたのに・・・。」
セーナが呆れた顔をするとユーリはすこし拗ねた声で言った。
 「私、嫌なんだもん・・・すごく嫌な気がするから。」
 「・・・この鏡の間はユーリの隠れ場所じゃないんだけど・・・。」
セーナはユーリの向かい側のソファーに腰掛けて言った。
鏡の間も、ブローチ型の鍵もセーナが創ったものである。ブローチ型の鍵はセーナだけでなくユーリも持っていて二人は自由にこの鏡の間に入ることが出来た。
 「ジョーって人は嫌・・・なんだか不穏なオーラが出てる・・・。」
ユーリはソファーに横になったままクッションに顔を埋めた。するとセーナはユーリの隣に移って言った。
 「ユーリ・・・ジョーがこのままじゃお父様とお母様に報告するって言ってた。」
 「そんなの勝手にすればいいじゃない!!私は絶対に嫌!!」
ユーリは顔を上げてセーナに向かって叫んだ。そんなユーリをみてセーナは苦笑して言った。
 「そういうと思ったよ。だから勝手にすれば〜って言っといた。」
 「・・・ありがとう・・・」
ユーリは小さい声でそう言うと再びクッションに顔を埋めた。
セーナは立ち上がると、奥の部屋へ入っていきしばらくして戻ってきた。そして、ユーリの隣に座り手を差し出した。セーナの手には綺麗なネックレスとブレスレットがあった。それを見るとユーリは勢いよく起き上がりセーナに言った。
 「きれ〜い☆どうしたの、コレ!?欲しい〜!!」
するとセーナは笑いながら言った。
 「これはユーリの物だよ。」
そう言ってユーリに渡した。
ユーリはセーナから受け取ると目を輝かせて聞いた。
 「ありがとう!!かわいい〜☆でも、どうしたの?作ったのぉ?」
 「うん。ブレスレットにはちょっとした通信機能がついてあるの。だから離れていても通話ができる。ミクロ携帯ってカンジかな?ネックレスには発信機と万が一の時のための防御装置を搭載してみた。」
セーナは自分用のブレスレットとネックレスを取り出し説明を始めた。
 「素材は長持ちするように全てプラチナを使用したの。ユーリのものではルビー、私にのものではサファイヤを使用した部分がボタンになってるのよ。そこを押せば通信できるし防御装置を作動させることができるの。」
一見、ユーリの物はルビーを中心としてダイヤが散りばめられ、セーナの物はサファイヤを中心としてダイヤが散りばめられたシンプルな形のジュエリーだった。
ユーリはセーナの説明を聞きながらブレスレットとネックレスをつけてみた。
 「きゃあ♪かわいい〜!!ねぇ、ねぇ、セーナ見てよ!!どう!?」
ユーリがはしゃぎながらセーナに聞くと、セーナは呆れながら言った。
 「・・・似合ってるよ。ユーリ・・・ちゃんと説明を聞いてる!?」
 「もちろん!!このルビーの部分がボタンなんでしょ!?で、防御装置って?」
ユーリは鏡を見ながらセーナに言った。
 「うん・・・わかってるならいいのよ・・・。防御装置については今から説明するよ。」
 「うん♪」
セーナが防御装置の説明を始めるとユーリはソファーに座った。
 「防御装置は2種類搭載したの。1つ目は電気ショック。電気ショックと言っても普通の電気ショックじゃないよ。私たちの体内にある静電気を何倍もの威力で体外に放出することができるのよ。中心にあるルビーまたはサファイヤを押すとこのネックレスが体内から静電気を集め、その威力を増幅させ私たちの体の周りに張り巡らすのよ。だから、ちょっと物にふれただけで破壊したりできるのよ。」
 「え・・・でも、物に触れたりしたら私たちが感電するんじゃないの?」
セーナにユーリは首を傾げながら聞くとセーナはユーリを指差して言った。
 「そんなバカなことを私がするとでも!?大丈夫!!電気は体外へ放出されるのみで体内に入ることはないわ。ちゃんと考えて作ってあるんだから!!」
 「一方通行ってコトね・・・ん?でも・・・これに用いる電気って私たちの体内にある静電気なんでしょ?」
ユーリが考えこんでセーナに聞いた。
 「それじゃあ、細胞活動に使われている静電気を使うことになるんじゃ・・・」
 「それも大丈夫!!私たちの生命活動に差し支えることはないから・・・この防御装置に使われる静電気の主となるのは、私たちが物に触れたりしておこる摩擦力などで生じる静電気だから。私たちの生活って結構静電気が生じているのよ!!それに蓄積機能もついてるから、乾燥した日などは充電日和ってわけ!!わかった?」
セーナが説明するとユーリは驚きながらコクリと頷いた。
 「もう一つの装置は、一度しか作動させることができないの。かなり大規模な防御装置だから・・・」
セーナは真剣な顔つきで説明を続けた。
 「この防御装置の防御力をもってすれば、100%防御することができる自信がある。でも作動させるときは慎重に。」
 「そんなにすごいの!?でもなんでそんな装置を搭載したの?」
ユーリが聞くとセーナはユーリの顔をのぞきこんで言った。
 「ユーリがね・・・なんだか嫌な予感するって言うから。念のためにね・・・」
 「あ・・・ありがとう!!」
ユーリはちょっと照れてセーナに言った。セーナはネックレスを見ながら言った。
 「作動方法は簡単。この中央についているルビー、サファイヤを割ればいいの。この宝石内に作動装置を組みこんだから宝石が割れると同時に作動する仕組みになってるのよ。この防御装置が作動すると私たちの周囲に重力場が発生するの。だから外からの攻撃に対しては完璧に防御ができるんだけど・・・」
 「・・・だけど?」
ユーリがセーナに聞き返すと、セーナは真剣な顔をしてユーリに言った。
 「重力場が発生するとその周囲のものを全て破壊してしまうの。ブラック・ホールみたいに引き寄せ、圧力で潰してしまう・・・だから、これは共鳴作動するようにしてあるの。私たち2人が近くにいても、お互いに重力場を発生させると反発しあって影響はないから。でも、私たちの周囲の物や人は・・・」
 「・・・被害が大きくなるってことね・・・。」
ユーリがそう言うとセーナは頷いた。
 「大丈夫だよ。電気ショックがあるんだし・・・そんな危険が私たちに及ぶことはないだろうから・・・。ありがとう、セーナ!!」
ユーリはセーナの手をとって微笑みながら言った。

禁じられし扉 第5話

王妃の名は『エレーナ・アリアット・キャステル・ディナスティー・ド・シャトゥーム』
隣国のディナスティー王国、第一王女として生まれ、この世で一番美しいと言われる美貌と優秀な頭脳を持ち、そのうえとても優しい心の持ち主だった。
ザビエル王がまだ王子だったころ、親善のために訪問した時に今の王妃と出会い王子は一目で恋に落ち、妃に迎えた。王妃も慈悲深いザビエル王に心を惹かれ、王の求婚を承諾しザビエル王の下に嫁いだのだ。そして、双子の王女を出産した。
常に王の傍に控え、必要とあらば王に助言をし、王の一番の支えとなっていた。
王も王妃のことをとても大切にしていた。
王妃は私室に戻り、ソファーに腰掛け溜め息をついた。すると、傍仕えの女性がハーブティーを入れながら王妃に行った。
 「エレーナ様。なにか心配なことでもあるのですか?」
 「ばあや・・・。」
ばあやは王妃が隣国の王女だった頃からの傍仕えで王妃として嫁いで来たときにも王妃の傍仕えとしてこの城に来たのだ。王妃のよき相談相手であり、よき理解者であった。
 「私はエレーナ様の笑顔が一番好きなんですよ・・・。」
そう言って王妃にハーブティーを渡した。王妃はカップを受け取り一口飲んだ。
 「ふふふ・・・。ばあやのハーブティーを飲むと落ち着くわ・・・。」
それを聞くとばあやは笑顔で王妃に言った。
 「エレーナ様。ご自分のお気持ちを隠してはいけませんよ・・・国王陛下もエレーナ様には率直な意見を言っていただきたいと思っておられるはずです。もし、不安な事があるのならば国王陛下に・・・」
 「大丈夫よ、ばあや・・・。ユーリとセーナの教育係りの件だから・・・。」
王妃はばあやの言葉を遮って言った。
 「しかし・・・最近のエレーナ様はいつも悩んでおられるように見えます。私の思い違いならいいんですけど。」
ばあやが心配そうに王妃に言うと、王妃はばあやの顔をじっとみつめた。
 「・・・ばあやは本当に私のことをいつも見ているのね・・・。」
王妃がそう言うとばあやは笑いながら行った。
 「当然です。私はエレーナ様がまだ赤ん坊だった頃からずっとお傍にお使えしてきた身なのですよ!!エレーナ様のことはこの城内では私が一番よくわかっているつもりです!!」
すると王妃は立ち上がり窓の外を見て言った。その窓からはユーリとセーナが庭にいるのが見えた。
 「今度、ユーリとセーナの家庭教師としてこの城にこられたジョーという男性のことなんだけど・・・ユーリがよくないと・・・。」
 「選考会で選ばれた方なのではないのですか?」
ばあやが聞くと王妃は頷いて言った。
 「そうよ。私も大丈夫だと言ったのだけど・・・でも、ユーリには不思議な力があるから・・・あの子が嫌だと言うのなら変えたほうがいいのかもしれないと思って陛下に言おうとしたんだけど・・・」
 「国王陛下はなんと?」
 「・・・陛下は彼のことをとても気に入っておられたわ。王女たちの教育係にして、ご自分も彼に学ぶべきことが沢山あるのだ・・・と。だから、言えなくて・・・。」
王妃はそう言うとばあやの方を見た。
 「さようでございましたか。しかし、国王陛下が気に入っておられるのでしたら変えることは難しいのでは?」
ばあやは王妃が飲んだカップにハーブティーを注ぎながら言った。すると王妃はソファーに再び腰掛けて言った。
 「えぇ・・・。だからしばらくは様子を見ようと思うの。でも、ちょっとユーリの一言が気になってね・・・。それに陛下も・・・。」
 「エレーナ様?」
王妃が難しい顔をするとばあやは心配そうに言った。
 「陛下はとても真面目な方だから。あまり無理をなさらなければいいんだけどね・・・。それも心配なのよ・・・。」
王妃が苦笑しながら言うと、ばあやは向かいのソファーに腰掛け、王妃の手をとって言った。
 「エレーナ様。私はいつでもエレーナ様のことを大切に思っております。私にできることがあれば何でも言ってください。」
 「ありがとう、ばあや。」
そう言って王妃はばあやの手を握りかえした。

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